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種類豊富なヘアケア剤、何が合うのか分からず試しに買ったものの、使いきれないまま2~3個お部屋で眠っていないだろうか。
シャンプーやトリートメントと違い、ミニサイズでの販売や持ち帰りできるサンプルの用意がほとんどないのも悩ましいところ。

そもそもスタイリング剤やアウトバストリートメントのように、お風呂の外で使う髪用アイテムの役割や必要性とは何なのか。
何が違いで、どう選べば悩みを解決してくれるのか。
この記事では、そういった大きな前提となる部分についてのお話を。

ポイントは

  1. 求める役割
  2. 欲しい質感
  3. 毎日オフできるか

スキンケアや化粧になぞらえるとイメージが掴みやすく、
ご自身の髪にとって必要なものや不要なものを予想しやすくなることで、より納得して省ストレスに髪型を楽しめるかも知れない。

Point1・お風呂の外で使うヘアケア剤の役割は、大きく2つ

「スタイリング剤」「洗い流せるトリートメント(=アウトバストリートメント)」「美容液」など、お風呂の外で日中対策として使う髪用のアイテムは、製品によって様々な名前がつけられている。
命名と線引きに関してはメーカー各社さんによるところが大きいため、
ここでは一旦全部横に置いてシンプルにこれらの役割だけに着目すると、大きく2つに分けられる。

髪をケアするもの(補う・守る)
形などを維持するもの

ナチュラル志向の流れとともに「ケアしつつ緩く維持もする」という欲張り製品が増えているが、
まずは「ケア・維持」の2つに絞ってそれぞれ何ができるのかを整理したい。

ケアするアイテム(補う・守る)
役割
  • 水分・油分・タンパク質など髪に必要な成分を補う
  • 熱や摩擦の影響から髪を守る
効果
  • 髪内部の成分が変性したり流出したりするのを防ぐ
  • キューティクルが役目(髪内部を守る)を果たしやすい状態に整う
つまり
  • 後天的くせ毛や枝毛など、将来のトラブルを未然に防げる
  • カラーやパーマなどの持ちが良くなる
  • アイロンやパーマで作ったカールの持続性が上がる
  • 手触りが良くなる
  • まとまりやすくなる

忘れないでおきたいのは、「これを使いさえすれば何をしても大丈夫、というわけではない」こと。
これらはあくまで防御力を上げるための盾のようなもので、万全でもないし万能薬でもない。

髪は肌と違い既に死んでいて自己修復をしないため、傷んだ場合そのツケは後々に手間と悩みになって返ってくる。
この点は肌へのUV対策と似ていて、後を思えばこそ日々の守りに注力するほうが多方面でコスパがいい。

維持するアイテム
役割
  • ブロー・アイロン・パーマなどであらかじめ作った形を固定して維持する
  • 視覚または触感的に質感を演出する(ドライ、ウェット、艶など)
効果
  • セットした形を一定時間維持できる
  • 髪表面に薄い皮膜が形成される
  • ファッションの一部として髪を演出できる
つまり
  • 希望の髪型を一定時間持続できる
  • 日中の摩擦による影響が軽減される
  • 自己表現の一手段(化粧のようなもの)

こちらもスキンケアの流れで例えるなら、化粧、中でもファンデーションに近い。
ツヤ、マット、シアーなど様々な質感を演出でき、化粧のりをよくするには肌(髪)の状態が整っているほうがより綺麗に仕上がるし持ちもいい。

また、維持するアイテムはそれ自体で髪型を変形・変質させるものではなく、あくまで整えた土台に対してアクセントを加えるもの。
よく「スタイリング剤を揉み込む」という表現を見聞きするが、その動作によってパーマやカールが復活するわけではない。
「形を作ること」「形を維持すること」は別もので、前者はドライヤーやアイロンやパーマの役割だ。

ここまでをまとめると、

形などを維持するには維持するアイテム、
形を作るのはドライヤーやアイロンやパーマ、
それらをより楽しむにはケアするアイテムが有効。
それぞれ役割が違う。

うまくスタイリングできないときにこれらを思い出してみると、糸口が見つかるかもしれない。

日中使うヘアケア剤の役割と関係性は以下の記事後半にある一覧表もご参考に。
(基本のヘアケアを網羅してるので、アホ毛に悩んでるわけではない方にも。)

Point2・手櫛が通る方がいいのか通らなくていいのか、の2択

直感で選んでみると、ややこしい問題も案外シンプルに捉えやすくなる。

起きて活動している時、髪に手櫛が通る方がいいのか、通らなくていいのか。
例えば風に吹かれた時、俯いたり仰いだりした時の髪の様子を思い浮かべてみよう。
髪はどうなって、それに対してどんな仕草や感情を抱くだろう。
吹かれるまま靡いて手櫛でささっと直すのか、
一糸乱れずノータッチなのか、
ご自身にとってどちらが心地いいかを直感で選んでみると、自ずと選択肢は絞られてくる。

  • 手櫛が通る方がいい
    → ケアと維持を兼ねたアイテム、緩めに維持するアイテム
  • 手櫛が通らなくていい・固めてしまいたい
    → 強めに維持するアイテム

そして、

  • 手櫛は通って欲しいけどあらかじめ作ったカールなども維持されてほしい・アホ毛や浮き毛を根本的にどうにかしたい場合、Point1の通り髪の健康が重要。
    →スタイリング剤で力技に出るよりも、ケアに着目するほうが遠回りなようで長期的な効果を得やすい。

Point1~2をまとめると、お風呂の外で使う各種のヘアケア剤は、おおよそ下図ように分類できる。

Point3・毎日すっぴんに戻す

髪にとって不要な汚れが表面に蓄積しても、肌のように吹き出物ができるわけではないし髪自体は痛くも痒くもないのでトラブルに気付きにくい。
けれどスタイリング剤やアウトバストリートメントに含まれる、髪や頭皮の健康にとって不要な成分は、毎日オフしなければやはり後々の不調やトラブルにつながっていく。

肌のクレンジングを思い浮かべてみて欲しい。
しっかりファンデーションを使った日・全体的にあまり化粧をしなかった日、
落とす手間やクレンジングの量、そして肌への負担とそのフォローも、前者の方が多くないだろうか。

近い将来、髪の「うねる・ぺたんこになる・浮き毛が暴れる」などの悩みを回避するには日中使ったヘアケア剤を毎日きちんと落とすことが大切だし、
「まとまらない・ぱさつく・枝毛・ひっかかる・頭皮が乾燥する」などを回避するためには、落とすために安易に洗浄力が強すぎるシャンプーを日常使いすることは避けたい。

ではどうすれば良いのか。

早い話が美容師に相談するすることで、製品情報やヘッドスパなどのメニューで解決の糸口を提案してくれる。
職業柄、製品に関してはディーラーさんやメーカー各社さんから説明を受けて様々なものを試す機会もあり、経験則による髪質の独自見解もあり、お一人でネット情報を探すよりも簡単に合うものが見つかる可能性が高い。

そのハードルが高い方へあくまで私の提案としては、まずシャンプーを美容室専売品に変えてみてほしい。
この記事でこんなことを言うのも矛盾しているようだが、ご自身の髪に何が必要で何が不要なのかを探るには、髪のすっぴん状態を知っている方が予想しやすい。
そして「不要なものが蓄積しているかどうか」は、毎日触れて感触に慣れているご本人だからこそ、意図的に機会を作らないと気付きにくいように思う。
専売品をおすすめするのは、オフすることが新たなダメージを誘発しては本末転倒だから。
「美容師が仕事しやすい髪の状態を実現すること」も加味して作られている専売品は、「低刺激で泡立ちよくしっかりオフ」を両立できるものが多い。

主にはスタイリング剤を付けないほぼすっぴんの感触やまとまりなどをご自身で感じてみて、
「このほうが調子良いかも」ということであれば、これまで剤が落ちきらずに残っていたことが予想できる。

日中の顔となりうるファンデーションを今すぐ変えることは、心理的にもライフスタイル的にも踏み出しづらいかもしれない。
けど洗顔やクレンジングに当たる、シャンプーはどうだろう。
人知れずこっそりと取り組めるし、髪表面の蓄積物がオフされれば、これまでご使用のケア剤の栄養が浸透しやすくなり、
普段の手入れもふとした瞬間の扱いも次第に楽になっていくはず。

そしてシャンプーを変えてみて調子がいいのならそのままでもいいと思うし、
更にすっぴん向上を探っていくとしたら、できることは複数ある。

スタイリング剤を使わずに髪を休める日も作ってみる
時々頭皮や髪用のクレンジングオイルを使ってみる
クレンジング目的のヘッドスパを受けてみる

など、どれも「落とすこと・栄養の浸透を妨げないこと」に着目したもの。
何をどう使うにせよ、毎日すっぴんに戻す用意が整っていることは、その次の「補う」工程の効率を上げ、楽しく扱いやすい髪型の選択肢に繋がっていく。
「どんなファンデーションを使えばいいのか」と同じくらい、クレンジングや洗顔の用意を整えることも大切にしたい。

まとめ

髪をスタイリングしたりアレンジしたり質感を変えてみたり、気分に合わせて化粧をすることは楽しい。
それは美容師だからこそ身に染みて感じているし、基本情報を多く網羅するために沢山書いたけれど、「あれもこれも髪に良くないからやめましょう」と堅いことは言いたくない。
ファッション性も髪の健康も、それを扱うご本人の心地よさもバランスよく成立させたい。
だからこそ「やるなら悪影響をできるだけ抑えられる方法」を地道に続けることが大切だと思う。
それがこの記事で触れた「役割や好みの質感で選ぶ・すっぴんに戻す」こと。

日中使う製品の選び方がわからない時、スタイリングがうまくいかない時など、大きな前提知識として見返してみると何かヒントなるかもしれない。

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